PHPは、おもにWebサーバー上で動作するサーバーサイドスクリプト言語です。多くの業界やさまざまな分野で活用されているPHPですが、どのような言語なのでしょうか。
この記事では、PHPの特徴だけでなく、ほかのプログラミング言語との違いも解説しています。
プログラミング言語をこれから始めたいと思う人は、この記事を読んで、PHPで学習を始めるかどうかの参考にしてください。
PHPとは
PHPは、「Hypertext Preprocessor」の略称で、おもにWebサーバー上で動作するサーバーサイドスクリプト言語です。Web開発の主要な言語の1つとして成長し続けており、今でも多くの業界やさまざまなシステムで使用されています。
特に、CMS(コンテンツ管理システム)やeコマースプラットフォームなど、多くの人気Webアプリケーションの開発に使用されています。たとえば、WordPress・Drupal・JoomlaなどのCMSはPHPで書かれており、世界中の多くのWebサイトの基盤となっています。
PHPは、動的なWebページやアプリケーションを作成するために使用され、HTMLコード内に直接埋め込むことができるのが特徴の1つです。
ほかにも、多くの特徴を持つPHPですが、詳しくは後述します。
PHPの特徴
PHPはその柔軟性や使いやすさ、多くの機能などから高い評価を受けており、Web開発の分野で広く使われている言語です。小規模なWebサイトから大規模なWebアプリケーションまで、幅広いプロジェクトで利用されています。
ここでは、このようなPHPのおもな特徴を、以下3つの項目にわけて解説します。
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動的型付け言語である
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フレームワークが豊富にある
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WEB系の開発に強い
それぞれの項目をみながら、PHPのことをより深く理解していきましょう。
動的型付け言語である
動的型付け言語であるとは、変数の方が実行時に決定される、という意味です。そのため、プログラマーは変数を使用する際に、その型を明示的に宣言する必要はありません。
PHPのインタープリターでは、プログラムが実行される際に変数の型を自動で識別し、必要に応じて型変換を行います。
動的型付け言語には、変数の型を事前に宣言する必要がないため、開発が迅速かつ柔軟に行えるという利点があります。特に、迅速な開発サイクルが求められるプロトタイピングや小規模プロジェクトでより大きな利点となるでしょう。
ほかにも、コードが簡潔になり、読みやすくなるという利点もあります。これは、型宣言が不要なため、プログラムの記述量を減らせるためです。
ただし、注意点もあります。
動的型付け言語であることは、型の不一致によるバグが発生しやすくなるというデメリットを持ちます。実行時まで型のエラーが明らかにならないため、開発者はプログラムの動作を注意深くテストし、型の問題が発生すればそれに対処する必要があるでしょう。
また、大規模なプロジェクトでは、型の明示的な宣言が保守性や可読性を向上させる場合もあります。
このように、PHPの動的型付けは、その柔軟性と開発の迅速性を支える重要な特徴ではありますが、適切なテストやデバッグを通じて、潜在的な型関連の問題を管理する必要がある点に注意が必要です。
フレームワークが豊富にある
PHPの大きな魅力の1つとして、豊富なフレームワークの選択肢があります。フレームワークは、開発の効率化・標準化、およびセキュリティの強化を目的としたものです。
PHPのフレームワークを活用すれば、開発者は1から全てをコーディングする手間を省けるため、プロジェクトの立ち上げ時間の大幅な短縮が期待できます。
以下は、PHPでよく使われるフレームワークの一例です。
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Laravel
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Symfony
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CodeIgniter
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Zend Framework
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CakePHP
これらのフレームワークは、PHP開発者にとって非常に有用なツールで、プロジェクトの要件・規模、および個人の好みに応じて、最適なフレームワークの選択が可能です。
PHPには豊富なフレームワークが存在するため、開発者は、さまざまな種類のプロジェクトに柔軟に対応することができます。
WEB系の開発に強い
PHPは、Web開発を目的に作られているプログラミング言語であるため、Web系の開発において強力な特性を持っています。
以下は、PHPがWeb開発において強いとされるおもな理由です。
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サーバーサイドスクリプティング言語である
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HTMLとの統合が可能
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広範囲なデータベースをサポートしている
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豊富なライブラリとリソースがある
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幅広いホスティングをサポートしている
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クロスプラットフォーム対応している
PHPは、サーバーサイドで実行されるスクリプト言語であるため、動的なWebページやアプリケーションを作成することが可能です。
また、PHPコードはHTMLタグ内に直接挿入することができ、HTMLコードとPHPコードを
簡単に組み合わせることができます。このため、動的なコンテンツを含むWebページの容易な作成が可能です。
PHPは、MySQLやPostgreSQLをはじめとした、ほとんどの主要なデータベースに対応しています。ほかにも、画像処理・PDFファイルの生成・XMLの解析など、さまざまなタスクをサポートするための豊富な標準ライブラリがあります。
PHPは、ほぼ全てのWebホスティングサービスでサポートされているのが強みの1つです。多くのホスティングプロバイダーは、PHPをプリインストールしており、設定済みの状態でサーバーを提供しています。
クロスプラットフォームに対応しているのも強みの1つです。Linux・Windows・macOSなど、さまざまなオペレーションシステム上での動作が可能です。
このため、開発に依存することなく、幅広いプラットフォームでのWebアプリケーションの開発ができます。
これらの特徴により、PHPの使いやすさ・柔軟性、および豊富な機能は、小規模なWebサイトから大規模なWebアプリケーションに至るまで、あらゆる種類のプロジェクトに適しています。
PHPとほか言語の違い
ここまで、PHPの特徴をいくつかみてきました。PHPは、Web開発を目的に開発されたプログラミング言語であるためWeb系開発に強く、また、フレームワークが豊富にあることも特徴の1つです。
次に、PHPとほか言語との違いをみていきましょう。
PHP以外にも多くのプログラミング言語が存在しますが、今回は、以下の項目に分けて、そのいくつかの言語との違いを解説します。
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PHPとHTMLの違い
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PHPとJavaScriptの違い
これらの項目から、PHPとの違いをみて、PHPをこれから学んでいくかどうかの参考にしてください。
PHPとHTMLの違い
以下は、PHPとHTMLの違いを項目ごとにまとめたものです。
PHP |
HTML |
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言語 |
Webサーバー上で実行され、動的なコンテンツを生成してその結果をクライアント(ブラウザ)にHTMLとして送信します。 |
Webページの構造を定義するための標準マークアップ言語です。テキストコンテンツをどのように表示するか、画像やリンクなどの要素をどのように表示するか、画像やリンクなどの要素をどのように配置するかを指定します。 |
動作 |
HTML内に直接挿入されるかまたはPHPファイル内で独立して使用されます。 |
ブラウザによって解釈され、ユーザーに視覚的なWebページとして表示されます。 |
コンテンツ |
動的コンテンツで生成されます。データベースとのやり取り・フォームデータの処理・セッション管理などの機能で、動的なWebページやアプリケーションを作成します。 |
静的なコンテンツで表示されます。HTMLファイル自体は、動的な操作やデータベースの直接的なやりとりはありません。 |
上記のように、PHPとHTMLは、Web開発において密接に関連しながらも、役割と機能が大きく異なっています。簡単にいえば、HTMLはWebページの「骨格」を形成し、PHPはその骨格に「肉付け」をするための動的なデータやロジックを提供します。
PHPとHTMLの組み合わせにより、静的なWebページだけでなく、ユーザーのインタラクションに応じて内容が変わるような、動的なWebサイトやアプリケーションの作成が可能です。
PHPとJava Scriptの違い
PHPとJavaScriptの違いを、以下の表にまとめました。
PHP |
JavaScript |
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実行環境 |
Webサーバー上でPHPのコードが処理され、結果として生成されたHTMLがクライアント(ブラウザ)に送信されます。 |
クライアントサイド(おもにブラウザ内)で実行されることが多いですが、Node.jsをはじめとするサーバーサイドでの実行が可能な言語もあります。 |
用途 |
Webサーバーでのアプリケーションロジックの処理・データベースとの連携・ファイル操作・ユーザー認証など、サーバーサイドの処理に特化しています。 |
Webページのユーザーインターフェース(UI)の動的な変更・非同期通信(Ajaxなど)・クライアントサイドでのデータ検証など、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上に貢献します。 |
開発の特徴 |
おもに命令型プログラミングスタイルに従いますが、オブジェクト指向プログラミングの要素もサポートしています。 |
多様なプログラムパラダイムをサポートしており、たとえば、オブジェクト指向・イベント駆動型・関数型プログラミングなど、幅広い開発スタイルに適応します。 |
動作 |
クライアントからのリクエストに応じてサーバー側で処理を行い、その結果をクライアントに返すことでインタラクションを実現します。 |
ページ全体をリロードすることなく、Webページの特定の部分のみの更新が可能です。 |
PHPとJavaScriptは、それぞれWeb開発の異なる側面を持っています。
PHPは、サーバーサイドの動的コンテンツの生成とデータ処理に重点を置き、JavaScriptは、クライアントサイトでのインタラクティブなWeb体験の提供に優れています。
PHPの代表的なフレームワークとは
ここまで、PHPとほか言語との違いをみてきました。PHPは、ほか言語と違い、サーバーサイドで処理が実行され、動的コンテンツを作成するのが特徴的です。
次に、PHPの代表的なフレームワークをみていきましょう。
以下は、代表的な2つのフレームワークです。
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Laravel
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CakePHP
それぞれのフレームワークの特徴を理解して、自身の用途にあったフレームワークを選択しましょう。
Laravel
Laravelは、PHPで書かれたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークです。開発者が使いやすく、そして、シンプルな構文や優れたパフォーマンス、ほかにも多くの機能を扱えることが高評価を得ています。
以下は、Laravelのおもな特徴です。
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シンプルな構文
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モダンなツールと機能
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ORM(Object-Relational Mapping)
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MVCアーキテクチャ
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Composerサポート
Laravelは、コーディングをシンプルにできるため、開発者は効率的かつ生産的にアプリケーションの構築が可能です。
ほかにも、ルーティング・セッション管理・認証・キュー・メール・キャッシュなど、多くのモジュールがあるのも特徴的です。これらの多くのモジュールを活用すれば、開発者はさまざまな機能を持ったシステムを構築できます。
Laravelには、Eloquentと呼ばれるORMが組み込まれており、データーベースの操作をオブジェクト指向のスタイルで行うことが可能です。
Laravelは、MVC(Model-View-Controller)アーキテクチャを採用しているため、アプリケーションのコードをより構造化し、保守性や拡張性を向上させることができます。
Composerによる依存会計管理をサポートしているのもLaravelの特徴の1つで、サードパーティのライブラリやパッケージを簡単に統合できます。
このような多くの特徴を持つLaravelは、小規模なウェブサイトから大規模なアプリケーションまで、さまざまな規模のプロジェクトに適しています。
CakePHP
CakePHPは、PHPで書かれたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークで、Ruby のフレームワークである、Ruby on Railsの影響を受けて設計されています。開発者に使いやすく、高速なWebアプリケーションの開発を可能にすることを目指しています。
以下は、CakePHPのおもな特徴です。
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コーディングの効率性
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MVCアーキテクチャ
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ORM
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セキュリティ機能
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データベースサポート
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豊富なコミュニティとドキュメント
CakePHPは、コーディングの効率性を向上させるために、コーディングの標準化や自動生成の機能を提供しており、開発者は重複する作業を最小限に押させることができ、迅速なアプリケーション構築を可能にしています。
CakePHPは、MVCアーキテクチャを採用しており、アプリケーションのロジック・データ・表示が分離されて、コードの構造をより簡潔にできます。
データベース操作をオブジェクト指向のスタイルで行える、ORMが組み込まれているのも、CakePHPの特徴の1つです。ORMを活用すれば、データベースのやり取りがより直感的で効率的に行えるでしょう。
CakePHPには、CSRF(Cross-Site Request Forgery)対策やXSS(Cross-Site Scripting)対策など、セキュリティを強化するための機能が多く組み込まれています。
また、MySQL・PostgreSQL・SQLite・Microsoft SQL Serverなど、複数のデータベースをサポートしているのも特徴的です。さらに、データベースマイグレーション機能も提供されているため、データベースのバージョン管理や変更の追跡が容易になります。
CakePHPには、活発なコミュニティと豊富なドキュメントが提供されているのも特徴の1つです。このため、開発者は問題解決のための情報やサポートを簡単に見つけることができるでしょう。
CakePHPは、Laravelと同様に、小規模なWebサイトから大規模なアプリケーションまで、さまざまな規模のプロジェクトに適しています。
まとめ
今回は、PHPに関して以下のことがわかりました。
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PHPはおもにWebサーバー上で動作するサーバーサイドスクリプト言語である
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CMSやeコマースプラットフォームなど多くの人気Webアプリケーションに使用されている
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PHPは動的型付け言語で豊富なフレームワークがあるのが特徴
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LaravelやCakePHPなどのフレームワークがある
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PHPはサーバーサイドで動作し動的コンテンツを生成する
PHPは、おもにWebサーバー上で動作するサーバーサイドスクリプト言語です。CMSやeコマースプラットフォームなどの、多くの人気Webアプリケーションに使用されているのが特徴的です。
PHPは、動的型付け言語で、豊富なフレームワークがあるため、用途によって使い分けることができます。たとえば、LaravelやCakePHPなどが代表的なフレームワークです。
PHPはサーバーサイドで動作し、動的コンテンツを生成することが可能です。
このように、初心者にも扱いやすいプログラミング言語であるPHPは、これからプログラムを学ぶ人におすすめです。
さまざまなWebアプリケーションに利用されているPHPで、プログラミング言語を始めてみるのはいかがでしょうか。